V3監督が明かした「怒る指導」からの転換点 月曜の動悸と決別した辻正人氏
全国優勝3度を誇る学童野球の名門、滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督が、指導者としての“暗黒時代”を赤裸々に告白した。7月27日に行われた野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベントで、選手の本気を引き出すための2つのポイントを熱く語ったのだ。
辻監督がこのクラブを立ち上げたのは20歳の時。指導歴は38年に及び、チームを3度の日本一に導き、“小学生の甲子園”こと「高円宮賜杯 全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」には9大会連続出場を果たしている。幼児から小学6年生まで部員は150人。野球人口減少が叫ばれる中、異例の集客力を誇る。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon しかし、その道のりは決して順風満帆ではなかった。辻監督はこう振り返る。「指導者は誰でも、選手を怒ってしまう道を通ると思います。私も悩んだ時期がありました。土日に活動して、月曜日になると動悸が起きるくらい後悔や反省しました。子どもたちを怒りすぎたと。保護者からチームを辞めるという電話が来ないか不安でした」。全国大会に出場しても選手や保護者が離れていき、部員確保に苦労した時期があったという。
転機は保護者へのアンケートだった。その辛辣な内容に猛省し、長年続けてきた怒る指導を見直す決断をした。過去の自分を否定することにもつながる苦渋の選択だったが、「最初の一歩は難しいです。ただ、それが上手くいくと、どんな化学反応が起きるのか、変えることが楽しくなります」と笑顔で語る。
辻監督が提案したのは、たった2つの認識だ。まず【1】子どもは未完成であることを認識せよ。多賀少年野球クラブには幼児も所属しており、練習中にお菓子を食べたりベンチで寝たりする子がいても笑顔で見守る。「子どもは段階を経て規律を覚えていきます。野生に理性が加わっていく段階なので、本能を生かした指導をしたい思いがあります。大人の思い通りに動かないものだと、指導者や保護者が理解する必要があると考えています」。
もう一つが【2】大人はただの“環境”であることを認識せよ。ここで鍵を握るのは保護者の巻き込み方だ。辻監督は練習時間を1時間半と短めに設定し、保護者が子どもを預けて帰らずグラウンドに滞在しやすい環境を整える。練習メニューの意図を説明する時は保護者も集めて親子で聞いてもらい、ノックの補助など積極的な参加を促す。「保護者は自分の子どもが説明を聞き逃さないか心配なので、段々と話を聞くようになります。さらに、私がどんな声掛けをするのか興味を持ち、保護者はノックの補助など、積極的に練習に参加するようになります。グラウンドと道具を貸して、子育ての場を提供している感覚です」。
「TURNING POINT」が実施したアンケートでは、指導者の悩みの上位に「適切な関わり方なのかどうか不安」「子どものやる気を引き出せない」「何度言っても上手く伝わらずイライラする」が挙がっている。辻監督の言葉は、そんな悩める指導者たちに一筋の光を投げかけている。怒声や罵声で強制しても状況は好転しない。まだ成長過程の子どもが大人の想定通りに動かないのは自然なことだ。過去の実績にしがみつかず、指導スタイルを変える勇気——それこそが、真の強さを生むのかもしれない。
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