オーナー反対を押し切った吉田正尚指名が生んだオリックス3連覇
2015年、総額約30億円とも言われる大型補強に失敗し、オリックス・バファローズはシーズン途中で森脇浩司監督が事実上の解任。チームは前年2位から一転して5位に沈んだ。この苦境の中、フロントは「血の入れ替え」という非情な決断に踏み切る。当時球団本部長を務めた瀬戸山隆三氏が、その裏側と、後のリーグ3連覇の礎となった運命のドラフトを明かした。
真っ先に標的となったのは、実績あるベテランたちだった。球団施設に呼ばれた馬原孝浩投手(推定年俸1億3500万円)、坂口智隆外野手(同7500万円)、比嘉幹貴投手(同6000万円)に対し、提示されたのは1500万円程度という破格の減額。減額制限を超えるこの提示に、馬原と坂口はその日のうちにロッカーを整理し、球場を後にした。選手会長も務めた功労者・坂口の退団にファンからは抗議の電話が殺到したという。
デニムに合う。履くだけで「ちょいワル」Tapoon 瀬戸山氏は「一からやり直さないと駄目だという気持ちが強かった。申し訳ない部分もあったが、やらなければならなかった」と振り返る。批判を覚悟で断行したこの荒療治と同時に、フロントはスカウティングの方針を大きく転換。それまでの社会人や即戦力重視から、数年後の東京五輪を見据えた将来性のある若手、特に高校生を中心としたポテンシャル重視の指名へと舵を切った。
そして迎えた2015年秋のドラフト会議。オリックスの1位指名候補は、青山学院大の小柄なスラッガー、吉田正尚外野手だった。瀬戸山氏は「体は小さいけれど、ものすごくパンチ力がある。門田博光さんのような選手になる可能性がある」と評価。しかし、獲得への道のりは平坦ではなかった。宮内義彦オーナーと福良淳一監督は「投手を獲るべきだ」と主張。さらに宮内オーナーは「指名するなら高山(俊・当時阪神1位)にしなさい。高山のほうがええ」と言い放ったという。
これに対し、瀬戸山氏と加藤康幸副本部長は「単独で吉田が行けます。獲るべきです」と猛プッシュ。福良監督を説得し、最後は「半ば無理やり」GOサインをもぎ取った。さらに10位では当時無名に近かったJR西日本の杉本祐太郎外野手を指名。「当たれば飛ぶ」というスケールの大きさに賭けたのだ。
吉田は入団後、最初の3年間は怪我に苦しんだが、やがて球界を代表する打者へと成長。杉本も「ラオウ」として覚醒し、本塁打王を獲得した。瀬戸山氏は「オーナーの意見を突っぱねてまで獲りましたからね。もう少し早く彼が活躍してくれていれば、僕も加藤もクビにならなかったかもしれない(笑)」と自嘲気味に笑う。泥にまみれ、憎まれ役を買って出てまで断行した血の入れ替え。その種は数年の時を経て、京セラドームに3連覇の歓喜を咲かせた。
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