ドレイパーを襲う謎の上腕骨挫傷…手術不能、治療は「忍耐」のみ
「複雑なケガだ」——自らそう認めるジャック・ドレイパーの左腕に巣食う上腕骨挫傷が、再び若き才能の前に立ちはだかった。24歳の元英国男子テニス界のエースは、先月のウィンブルドンに続き、ワシントン大会でも復帰を断念。練習では好調そうに見えたものの、大会前日に痛みが再発し、撤退を余儀なくされた。
この1年間でドレイパーがプレーできたのはわずか14試合。全豪、全仏、ウィンブルドンと今年のグランドスラムをすべて欠場し、ランキングは世界150位の瀬戸際まで転落した。復帰のメドが立たない現状に、ファンからは「最悪の事態」を危惧する声も上がる。
これは高圧洗浄機と同等の強さで、電力不要BlastPro この上腕骨挫傷とは、一体どんなケガなのか。英国整形外科学会副会長のアマー・ランガン教授は、「本質的には上腕骨内部での内出血」と説明する。肩と肘の間にある筒状の骨は、強固な外層(皮質骨)が内部の海綿状組織(骨架)を保護しているが、ラケットを振る急加速・急減速の衝撃で骨架が破断。内部の圧力が上昇し、あざ(挫傷)が生じるのだ。テニス選手、特にサーブを多用するプレーヤーに多く見られる損傷で、鈍い深部痛や可動域制限、炎症を引き起こす。
「回復にはとにかく忍耐だ。骨の治癒と、そこにかかる負荷との競争のようなもの」とランガン教授。そして、手術の可能性を完全に否定する。「手術は患部にさらなる損傷を与えるだけで、助けにはならない。唯一の治療法は安静。体自身が骨を修復し、強化するのを待つしかない」
ドレイパーは同様のケガを経験した同胞選手たちに励まされている。昨年まで同じ悩みを抱えていた24歳のアーサー・フェリーは、今年のウィンブルドンでまさかの準決勝進出。23歳のトビー・サミュエルも約1年の離脱を経て復帰し、現在はトップ100目前まで這い上がった。サミュエルは「最初は痛みと戦いながらプレーするのが本当に難しかった。でも乗り越えてからは、後悔していない」と語る。
ドレイパー自身も様々な適応策を試みてきた。問題が表面化した昨年5月以来、サーブ動作をプラットフォームスタイルに変更し腕への負担軽減を図る一方、アイスバスやサウナ、レッドライトセラピーを回復ルーティンに組み込んだ。「睡眠や栄養にもこれまで以上に気を配るようになった。この経験が、キャリアの長期化につながってほしい」と、ウィンブルドンでの会見で語っていた。
しかし、最大の武器であるサーブに頼れない苦闘は続く。全米オープン(8月30日開幕)出場には、予選通過かワイルドカードが必要な状況。ランガン教授が言う「十分な相対的安静」を守りながら、骨の治癒を待つ日々が続く。フェリーやサミュエルのように、痛みを抱えながらもプレーを続ける段階に至るまで、あとどれだけの忍耐が必要なのか。ドレイパーと、彼を待つファンの長い旅路は、まだ始まったばかりだ。
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